Short Story by Music
あの曲が小説になったら・・・
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二人の涙雨+誰よりキミが好きだから【3】
■ Last Episode ■
あれからあの人はどうしただろう。
もう違う人が隣にいるのかな。もしかしたら大阪へ帰ったのかもしれない。
「また考えてたろ?」
その声にハッと我に返ると、やさしく私を見る細められた目とぶつかった。
「ちょっとだけね」
「・・・まぁ、いいけどさ」
彼は小さくため息をついた。
気づけば一緒にいる存在なのに、私と彼の間に何もないことを、周りの友達は不思議に思ってるみたいだ。友達って表現より、家族とか兄弟とかって 方が近いのかもしれないと思うから、確かに単なる男友達とは違うけど、酔っ払って腕にしがみついたり、おぶってもらうことはあっても、それ以上男女の何か があるわけじゃない。
泣き喚こうが、愚痴ろうが、詰ろうが、甘えようが、何をしても許される唯一の場所。それが私にとっての彼の存在であり、下手に恋愛関係に発展させて関係を壊すことの方が怖い。
「今日は飲み過ぎるなよ」
「わかってる」
「本当にわかってんの?一昨日、本気で重かったんだぞ、背中で大暴れして・・・」
「あー、もう、耳にタコできるっ!ごめんて、謝ったじゃーん」
「おやじさーん、こいつにお水くださーい」
彼がカウンター越しにそんなことを言うから、私は空になった自分のグラスの代わりに、彼のグラスを奪って一気に飲み干した。
「こらっ、なにしてんだよ、飲み過ぎんなって言ったばっかだろぉ?」
「大丈夫、つぶれても見捨てない人がいるから」
「それ、それって、俺のことだろ!?」
「ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん!大正解っ!」
「・・・ったく、もう」
「大丈夫だって!家近いんだし!」
「家って、お前の家じゃなくて、俺んちだろ?また泊まってく気かよ?」
「これまた大正解っ!」
ふふふとおどけて笑って腕にしな垂れかかると、仕方なしといったように、頭をぽんぽんと強めに叩かれた。
「あのなぁ・・・」
「大丈夫っ!今日は私がコタツで寝るから!ベッドは使っていいよ」
「そうじゃなくて、あのな、一応俺、男なんだけど」
「わかってます!私も一応女です!」
「だからぁ、一応男と女なんだし、そのぉ、何か間違いが起きてもまずいだろ?」
「間違いなんて起こったことないじゃん」
「だから、今後は起きるかもしれないだろ?」
ん? 酔った頭には、言われてる意味が複雑になっててよくわからない。
「・・・間違い、起こす気なの?」
私の質問に、彼は何度か素早く瞬きをして「いや、そういうわけじゃないけど」と呟いた。
「なんだ、じゃあ問題ないじゃん?」
「まぁ、そうだけど・・・そうだけど、そういうことじゃなくて・・・」
「難しくてよくわかんない」
「あー、もう、なんでもないっ!」
彼はぎゅっと目をつぶって、髪が乱れるほど頭を振ると、
「おやじさーん、俺もお代わり!次はロックで!」
「あー、人に飲み過ぎるなって言ったくせに、自分だってぇー」
「飲まないでやってられっかよ、俺の方が先に酔いつぶれっから、お前、おぶって帰れよ!」
「はぁー?無理だよ、無理無理!重たくて引きづらなきゃいけないじゃん。途中で見捨てて帰るよ」
「見捨てんのかよ!ありえねー!」
「ウソウソ、ちゃんと連れて帰るって!」
「絶対?」
「絶対!」
「・・・添い寝付き?」
「わがままなヤツだなー、めっちゃくちゃ高いよー?」
「冗談だよ、バカ。お前、寝相悪いからベッドから落とされそうだもん」
「うわー、失礼なやつ!」
頬を膨らまして見せたら、思いっきり指でつつかれて空気が抜けた。お返しに彼の頬の皮を思いっきり引っ張ってやったら、
「イテイテイテ、引っ張りすぎだし!」
「すっごい伸びるんだもん、皮。どこまで伸びるかなーって思って」
「玩具にすんなよ、もっと愛情かけろって。俺には世話になってんから」
「はーい、いつもお世話になってます」
ぺこりと頭を下げると、頭をくしゃくしゃっとされた。
「眉毛なくなってんぞ」
「あれっ!?取れちゃった?やだー、もっと早く言ってよぉ」
焦ってカバンから鏡を出そうとしたら、彼に制止された。
「いいって。どうせ俺しかいないんだから」
「えー、でも、女子の身だしなみ的に・・・」
「そのままでも変わらないって。いつもと一緒!」
「嘘だぁ、眉毛あった方がかわいいでしょ? ねぇ、おやじさん?」
カウンターでお代わりを出してくれようとしてたおやじさんに振ると、なんだかよっぽど面白い物を見てるように笑いを堪えてる。
「眉毛がなくても、いつもどおりかわいいってことですよ」
そう言ってお代わりを彼の前に置いて目配せをしたのを目で追うと、彼はパチパチと素早く瞬きをして咳払いをした。
「まぁ、そういうことにしといてやるよ、おやじさんの顔を立てて!」
なにそれ、とたてつこうとしたら、突然両手で頭を掴まれてシェイクされた!
「ぎゃぁー、ぐらぐらするー!やめれー!」
「お前なんか早く酔っ払ってしまえっ!」
急速に酔いが回って訳がわからなくなる。ただ一つわかってることは、この後、私は彼におぶってもらい帰ることになるってことだけだった。
***The End***
あれからあの人はどうしただろう。
もう違う人が隣にいるのかな。もしかしたら大阪へ帰ったのかもしれない。
「また考えてたろ?」
その声にハッと我に返ると、やさしく私を見る細められた目とぶつかった。
「ちょっとだけね」
「・・・まぁ、いいけどさ」
彼は小さくため息をついた。
気づけば一緒にいる存在なのに、私と彼の間に何もないことを、周りの友達は不思議に思ってるみたいだ。友達って表現より、家族とか兄弟とかって 方が近いのかもしれないと思うから、確かに単なる男友達とは違うけど、酔っ払って腕にしがみついたり、おぶってもらうことはあっても、それ以上男女の何か があるわけじゃない。
泣き喚こうが、愚痴ろうが、詰ろうが、甘えようが、何をしても許される唯一の場所。それが私にとっての彼の存在であり、下手に恋愛関係に発展させて関係を壊すことの方が怖い。
「今日は飲み過ぎるなよ」
「わかってる」
「本当にわかってんの?一昨日、本気で重かったんだぞ、背中で大暴れして・・・」
「あー、もう、耳にタコできるっ!ごめんて、謝ったじゃーん」
「おやじさーん、こいつにお水くださーい」
彼がカウンター越しにそんなことを言うから、私は空になった自分のグラスの代わりに、彼のグラスを奪って一気に飲み干した。
「こらっ、なにしてんだよ、飲み過ぎんなって言ったばっかだろぉ?」
「大丈夫、つぶれても見捨てない人がいるから」
「それ、それって、俺のことだろ!?」
「ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん!大正解っ!」
「・・・ったく、もう」
「大丈夫だって!家近いんだし!」
「家って、お前の家じゃなくて、俺んちだろ?また泊まってく気かよ?」
「これまた大正解っ!」
ふふふとおどけて笑って腕にしな垂れかかると、仕方なしといったように、頭をぽんぽんと強めに叩かれた。
「あのなぁ・・・」
「大丈夫っ!今日は私がコタツで寝るから!ベッドは使っていいよ」
「そうじゃなくて、あのな、一応俺、男なんだけど」
「わかってます!私も一応女です!」
「だからぁ、一応男と女なんだし、そのぉ、何か間違いが起きてもまずいだろ?」
「間違いなんて起こったことないじゃん」
「だから、今後は起きるかもしれないだろ?」
ん? 酔った頭には、言われてる意味が複雑になっててよくわからない。
「・・・間違い、起こす気なの?」
私の質問に、彼は何度か素早く瞬きをして「いや、そういうわけじゃないけど」と呟いた。
「なんだ、じゃあ問題ないじゃん?」
「まぁ、そうだけど・・・そうだけど、そういうことじゃなくて・・・」
「難しくてよくわかんない」
「あー、もう、なんでもないっ!」
彼はぎゅっと目をつぶって、髪が乱れるほど頭を振ると、
「おやじさーん、俺もお代わり!次はロックで!」
「あー、人に飲み過ぎるなって言ったくせに、自分だってぇー」
「飲まないでやってられっかよ、俺の方が先に酔いつぶれっから、お前、おぶって帰れよ!」
「はぁー?無理だよ、無理無理!重たくて引きづらなきゃいけないじゃん。途中で見捨てて帰るよ」
「見捨てんのかよ!ありえねー!」
「ウソウソ、ちゃんと連れて帰るって!」
「絶対?」
「絶対!」
「・・・添い寝付き?」
「わがままなヤツだなー、めっちゃくちゃ高いよー?」
「冗談だよ、バカ。お前、寝相悪いからベッドから落とされそうだもん」
「うわー、失礼なやつ!」
頬を膨らまして見せたら、思いっきり指でつつかれて空気が抜けた。お返しに彼の頬の皮を思いっきり引っ張ってやったら、
「イテイテイテ、引っ張りすぎだし!」
「すっごい伸びるんだもん、皮。どこまで伸びるかなーって思って」
「玩具にすんなよ、もっと愛情かけろって。俺には世話になってんから」
「はーい、いつもお世話になってます」
ぺこりと頭を下げると、頭をくしゃくしゃっとされた。
「眉毛なくなってんぞ」
「あれっ!?取れちゃった?やだー、もっと早く言ってよぉ」
焦ってカバンから鏡を出そうとしたら、彼に制止された。
「いいって。どうせ俺しかいないんだから」
「えー、でも、女子の身だしなみ的に・・・」
「そのままでも変わらないって。いつもと一緒!」
「嘘だぁ、眉毛あった方がかわいいでしょ? ねぇ、おやじさん?」
カウンターでお代わりを出してくれようとしてたおやじさんに振ると、なんだかよっぽど面白い物を見てるように笑いを堪えてる。
「眉毛がなくても、いつもどおりかわいいってことですよ」
そう言ってお代わりを彼の前に置いて目配せをしたのを目で追うと、彼はパチパチと素早く瞬きをして咳払いをした。
「まぁ、そういうことにしといてやるよ、おやじさんの顔を立てて!」
なにそれ、とたてつこうとしたら、突然両手で頭を掴まれてシェイクされた!
「ぎゃぁー、ぐらぐらするー!やめれー!」
「お前なんか早く酔っ払ってしまえっ!」
急速に酔いが回って訳がわからなくなる。ただ一つわかってることは、この後、私は彼におぶってもらい帰ることになるってことだけだった。
***The End***
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