Short Story by Music
あの曲が小説になったら・・・
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二人の涙雨+誰よりキミが好きだから【2】
■ Episode 2 ■
「もう、無理・・・」
ふと小さく聞こえた声に振り返ると、ずいぶん後ろの方で、あいつが俯いたまま立ち止まっていた。
「なにがやねん。靴ズレでもしたん?」
人ごみで周りの目を気になる。俺は少し面倒に感じつつもあいつの近くまで歩いていくと、歩かせようと腕に手をかけた・・・途端、その手が振り払われた。
「なっ・・・」
「もう、疲れたよ」
今度は、はっきりと聞こえた。
「疲れたって、こんなとこで立ち止まっとったら邪魔やろ?子供やないねんから・・・」
「いいよ、先に行っちゃっても」
「は?」
こんな風にごねられたのは初めてのことで、俺は正直戸惑っていた。
「私が何も言わなかったら、気づかないで先に行っちゃってたんでしょ?」
「・・・・・・・」
何も言い返せずに黙り込んで、気まずさに空を見上げた。
・・・ポツッと冷たい雫が頬に落ちて、続くように振ってきやがった。
「雨や・・・」
俺がそう言っても、こいつは身じろぎもしない。
周りは慌しくなり、人々はみんな駆け足で雨宿りに逃げて行き、あっという間に俺らは取り残された。
「おい、なにぼーっとしとんねん!びしょ濡れになるやんか!」
「行っていいよ、私はいいよ」
「はぁ?なに言うとんねんて!はよせな・・・」
「私の言ってる意味、わからない?」
俺を見上げた悲しそうな目が、冗談で言ってるんじゃないと訴えていた。一瞬、俺の周りから音が消えた。その代わりに服の中まで進入してくる雨が背中を伝うので、ぞくっとしていた。
「――くんは、一人が好きなんだよ」
「なんやねん、その断定した言い方」
「間違ってたね。一人が好きなんじゃなくて、私といるのが好きじゃないだけだね」
俺は、気まずくなって顔を逸らしていた。
ひどい嫌味だ。確かにベタベタするのは好きじゃないから、そこまでかまってやらなかったことは事実だけど、こんな別れ話みたいな雰囲気になるなんて・・・しかもあつらえたように雨がひどくなってきて、前髪から水が滴ってコンタクトの目に入って痛んでくる。
雨を払うのを口実に横目で見ると、こいつは俺から目を逸らすように俯いた。今にもどこかへ走って行ってしまいそうで心細くなって、抱きしめてしまおうか迷っていた。
「・・・なんでそんな嫌味言うねん」
「嫌味じゃないよ、事実だよ」
「なんで勝手に決めるねん」
「少なくとも、私にとっては・・・もう、無理なの、一緒にいられない」
「なんやそれ、まるで別れ話みたいやんか」
「・・・別れ話だよ」
こいつの体温が恋しくなるくらい体が冷えていくのに、なんでこんなことを言われなきゃならないんだろう。俺がどんなにいい加減でも、ずっと俺だけを見て、笑顔で抱きしめてくれたのに。
俺がいけなかったのか。いけなかったんだとしても、今更取り直すことが出来ない気がした。こいつがこんなことを口に出したぐらいだ。もう決めてしまってるんだろう。
俺がどうこう言ってもきっと無理なんだと、どこかでわかってるのに、別れるのかと思うと恋しくて泣きたくなる。
抱きしめたい。強く、強く、今までにないほど強く。
だけど、これも俺の勝手なエゴになってしまうんだろう。
俺はどんどん濡れていくのに、雨宿りできる場所はもう閉ざされてしまった。
まるで最後の置き土産みたいだなぁと思った。この雨のせいで、仮に俺が泣いてたとしても、「雨や」と言い訳ができるように、こいつが降らせてくれたのかもしれないから。
・・・続く。
「もう、無理・・・」
ふと小さく聞こえた声に振り返ると、ずいぶん後ろの方で、あいつが俯いたまま立ち止まっていた。
「なにがやねん。靴ズレでもしたん?」
人ごみで周りの目を気になる。俺は少し面倒に感じつつもあいつの近くまで歩いていくと、歩かせようと腕に手をかけた・・・途端、その手が振り払われた。
「なっ・・・」
「もう、疲れたよ」
今度は、はっきりと聞こえた。
「疲れたって、こんなとこで立ち止まっとったら邪魔やろ?子供やないねんから・・・」
「いいよ、先に行っちゃっても」
「は?」
こんな風にごねられたのは初めてのことで、俺は正直戸惑っていた。
「私が何も言わなかったら、気づかないで先に行っちゃってたんでしょ?」
「・・・・・・・」
何も言い返せずに黙り込んで、気まずさに空を見上げた。
・・・ポツッと冷たい雫が頬に落ちて、続くように振ってきやがった。
「雨や・・・」
俺がそう言っても、こいつは身じろぎもしない。
周りは慌しくなり、人々はみんな駆け足で雨宿りに逃げて行き、あっという間に俺らは取り残された。
「おい、なにぼーっとしとんねん!びしょ濡れになるやんか!」
「行っていいよ、私はいいよ」
「はぁ?なに言うとんねんて!はよせな・・・」
「私の言ってる意味、わからない?」
俺を見上げた悲しそうな目が、冗談で言ってるんじゃないと訴えていた。一瞬、俺の周りから音が消えた。その代わりに服の中まで進入してくる雨が背中を伝うので、ぞくっとしていた。
「――くんは、一人が好きなんだよ」
「なんやねん、その断定した言い方」
「間違ってたね。一人が好きなんじゃなくて、私といるのが好きじゃないだけだね」
俺は、気まずくなって顔を逸らしていた。
ひどい嫌味だ。確かにベタベタするのは好きじゃないから、そこまでかまってやらなかったことは事実だけど、こんな別れ話みたいな雰囲気になるなんて・・・しかもあつらえたように雨がひどくなってきて、前髪から水が滴ってコンタクトの目に入って痛んでくる。
雨を払うのを口実に横目で見ると、こいつは俺から目を逸らすように俯いた。今にもどこかへ走って行ってしまいそうで心細くなって、抱きしめてしまおうか迷っていた。
「・・・なんでそんな嫌味言うねん」
「嫌味じゃないよ、事実だよ」
「なんで勝手に決めるねん」
「少なくとも、私にとっては・・・もう、無理なの、一緒にいられない」
「なんやそれ、まるで別れ話みたいやんか」
「・・・別れ話だよ」
こいつの体温が恋しくなるくらい体が冷えていくのに、なんでこんなことを言われなきゃならないんだろう。俺がどんなにいい加減でも、ずっと俺だけを見て、笑顔で抱きしめてくれたのに。
俺がいけなかったのか。いけなかったんだとしても、今更取り直すことが出来ない気がした。こいつがこんなことを口に出したぐらいだ。もう決めてしまってるんだろう。
俺がどうこう言ってもきっと無理なんだと、どこかでわかってるのに、別れるのかと思うと恋しくて泣きたくなる。
抱きしめたい。強く、強く、今までにないほど強く。
だけど、これも俺の勝手なエゴになってしまうんだろう。
俺はどんどん濡れていくのに、雨宿りできる場所はもう閉ざされてしまった。
まるで最後の置き土産みたいだなぁと思った。この雨のせいで、仮に俺が泣いてたとしても、「雨や」と言い訳ができるように、こいつが降らせてくれたのかもしれないから。
・・・続く。
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