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Short Story by Music

あの曲が小説になったら・・・

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二人の涙雨+誰よりキミが好きだから【1】

二人の涙雨+誰よりキミが好きだから (参考楽曲 by 関ジャニ∞)

■ Episode 1 ■

 人は、会えなくなっても簡単に忘れることが出来ない人が必ずいる。卒業とか転職とか、そういうのはまたいつか会えるって望みがあるし、亡くなっ た人は辛いけど、どうにもできない諦めの気持ちがあるのかもしれない。だけど、心から好きだった人との別れは、なんとも言えないものがあるんだろう。
 ことに、俺の隣をもどかしいぐらいにゆっくり歩く彼女の切なそうな顔を見ていると、なんて言葉をかけていいのか戸惑って、笑いにかえてしまいたくなるぐらいだ。
 西に傾いた日差しでオレンジ色に染まったその横顔は、俺のギャグに少しだけはにかんで、目の中に留まっていた涙がすっと一筋流れ落ちた。

「バカ・・・泣くなよ」

 やさしくするのも余計に泣かせてしまいそうな気がして、少し乱暴にその涙を手のひらで拭ってやると、彼女はやっと俺に顔を向けて笑った。

「ごめん。急に思い出しちゃってさ」

 急じゃないだろ。少し会話が途切れれば、いつだって元彼のこと考えてるくせに。

「自分で振ったくせに、いつまで引きずってんだよ。お前健全じゃないよなぁ」
「どうせもう一度やり直したいって言った方がいいって言うんでしょ?」
「だって好きなんだろ?」

 彼女は土手の石を足をまっすぐ伸ばして蹴り飛ばし、唇を尖らせて言った。

「好きだけど、実質振られたのは私の方だもん」
「それがよくわかんねーんだよなぁ。俺だったら好きだったら自分から別れようなんて絶対言わないもん」

 いつもいつもの堂々巡りだ。いくら相談に乗ったところで、気づけば振り出しの話しに戻ってしまう。別れた男との進展はなく、ついでに言えば俺との距離もちっとも縮まらない。
 もちろんふとした時に触れたり、酔っ払って繋いだした手に気まずさがない関係にはなっていっても、表向きは友情が深まっただけで、俺の本当の気持ちはますます言いづらく、心の距離は遠ざかるばかりだ。

「好きだから辛いって時もあるんだよ。これって女だけなのかなぁ?」
「そうじゃないだろ、お前だけだよ」
「だってぇ・・・」

 複雑な女心、俺にはなかなか理解できない。俺より3ヶ月先に出会った男がどんなやつだったかは、彼女の供述でしかイメージできない。だけど少な くとも俺の方がずっとずっとずーっと彼女のことを想っているって自信と、些細なことでも気軽に相談されるほど信頼できる友達だと思われてる事実が、俺の中 でどっちつかずになって首を絞めてくる。眠れない夜も多いし、急に泣きたくなることさえあるのは、時折叫びだしたいくらい『好き』が溢れてしまいそうにな るからだ。
 そう。俺は、元彼を想って泣く彼女を抱き締めることも、それほど好きな男の代わりになることも、友人関係を解消することもできず、ただ傍にいれることを選ぶ臆病者でしかない。

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